
野宿スキルがあれば宿泊費用をゼロにするという奇跡を享受することができます。
私たちはホテルやネットカフェに対して「安全で快適な空間」と引き換えにお金を支払います。ということは、私たちが野宿スキルを磨き上げることは「安全で快適な空間」を野外に構築することができるということですから、ゼロ円で街のあらゆる場所を宿泊施設へと変貌させることができるということです。
野宿スキルとは、自らの選球眼で安全な場所を峻別し、野外でも快適に過ごす技術を身に付けることです。本稿においてはこれから初めて野宿をする人に向けての知識を共有することを目的としています。
先行き不透明の世の中と言われて久しいですが、ある日、家を失って眠る場所がなくなったということがないとも限りません。そんな時に野宿スキルがあれば全く慌てずに済みます。野宿スキルは究極のリスクマネジメントと言えるかもしれません。
早速下記で「初めての野宿のための知識・技術」を見ていきましょう。
必要な持ち物
本稿は「持ち物はできるだけ少ない方が良い」という立場で書かれています。つまりは、持ち物の最小は「何も要らない」です。そのまま寝る。事実、私の住む街を徘徊しているホームレスらしきおじさんは常に何も持っていません。大変に逞しい。
とは言え、世の中にはたくさんのアウトドアグッズが溢れているのであり、その便利さを享受するのも悪くはありません。要は「寝る際の快適さ」と「持ち物の多さ」のトレードオフであり、それぞれの人の価値観によって取捨選択していけばいいと思います。
下記、「あるととても良いもの」「あっても良いもの」「あっても良いけどなくても良いもの」の3つに分類して必需品を紹介しましょう。
あるととても良いもの
寝袋
寝袋にはそれぞれ「対応温度」があることに注意。平地で使用するのか登山用なのかによって防寒レベルが変わってきます。対応温度が高ければ薄く、対応温度が低ければ外気温に対して堅牢な寝袋であるということです。
マット
寝る際に下に敷くものです。自動的に空気が入って地面との緩衝になります。あるのとないのとでは快適さが全然違ってきます。
ヘッドライト
意外と便利。必需品と言ってもいいでしょう。
雨具、ウインドブレーカー
雨が降った時に快適にいられるかどうかはこれにかかっています。
食料、水
説明するまでもないでしょう。
防寒着
夏以外の季節では必要。春や秋は急に冷え込むこともある。枕代わりにもなります。
かばん、リュックサック
荷物を詰め込むためのものです。
タオル
洗顔、洗髪、夏は首に巻くなど、何かと便利です。
あっても良いもの
テント
必要かどうかは野宿の状況にもよります。自転車で日本一周を目指すなど、長期に渡る旅においては屋根のある寝床を毎晩見つけられる保証はないので必要になってくるでしょう。
身分証明証
警察に職務質問をされた際に身分証明証を速やかに提示することによって厄介事にならずに済みます。
携帯電話(スマホ)と充電器
スマホは地図にもなるし情報を収集できるし暇つぶしにもなるしラジオにもなるので是非とも持っておきたいところ。野宿するならモバイルバッテリーは必須。太陽光で充電できるものもあります。
あっても良いけどなくても良いもの
ガスコンロ
食事を作ったり湯を沸かすためのもの。但し、荷物になるし、食費がかえってかさむという意見もあり賛否両論です。
虫除けグッズ
あれば夏を快適に過ごせます。後に詳述します。
野宿場所の選定
野宿場所において熟慮すべきことは「トイレの有無」「危険の回避」「雨風の防備」です。
トイレの有無、危険の回避
できるだけ治安の良い場所で野宿をすることで、地元のヤンキーに絡まれて金品を強奪されたり暴力沙汰になったりすることを避けることができます。『野宿入門』(かとうちあき、草思社文庫)においては、トイレの近くに野宿拠点を設えることによって急に催した際の対策になるとした上で、トイレに落書きがないかをチェックすることによって治安の度合いを計ることもできるとしています(P61)。
物騒な落書きがなく、清潔で、トイレットペーパーがきちんと替えてあるようなトイレの付近は治安が良く、安心であると予測されます。
雨風の防備
囲いや屋根があるのとないのとでは快適さが違ってきます。特に悪天候から身を守るためには室内に優るものはありません。台風の中を公園においてテントと寝袋で過ごすのは大変に不安であり、生命の危機さえ感じます。
野宿に適した場所の具体例
公園
公共の場所ですから野宿をしていても怒られることはありません。トイレがあり、治安が良さそうで、東屋があると完璧です。
バス停
田舎のバス停には申し訳程度の待合室が設えられているところがありますので、そこを利用させてもらいます。
無人駅
旅人にとって無人駅は定番の野宿スポットになっているようです。雨風を防ぐには最適。積極的に利用しましょう。
道の駅
全国に増えている道の駅は新たな野宿スポットとして脚光を浴びています。「道の駅」という野宿者のための施設であるかのようなネーミングが心強い。
橋の下
自転車で日本一周をした鈴木タカさんはその道中、橋の下でテントを張って野宿をした回数が一番多いとしています。理由は「雨を防げる」「日陰になる」「公共の場所である」ためと三拍子揃っています。
(参考記事:【9,344km】自転車で日本一周した奴による旅のノウハウ全て)
東屋
公園や広場、河川敷などに東屋を見つけたら宿泊場所としてもいいでしょう。屋根があるだけでも心理的にだいぶ違います。
トイレ
上述した「トイレの近く」ではなく、「トイレ」自体で寝てしまうということです。屋根と壁があることで風雨を防げ、個室には鍵がかかるから安全面に優れ、便座は椅子代わりになり、何よりトイレに行きたくなってもそこが既にトイレであるという抜群の利便性を兼ね備えています。衛生面において我慢ならない場合は仕方ないとして、選択肢の一つとして頭に入れておきましょう。
夏と冬の野宿対策
春や秋は過ごしやすい気温であることが多く、野宿に難儀することは少ないでしょう。雨、強風、台風こそあれど、毎日のように終わりなき災難が降りかかることはないとみなして良いです。
それに比べて、夏と冬は過酷です。夏は毎日暑いのであり、冬は毎日冷え込むからです。特に夏においては防虫対策、冬は防寒対策が肝要になってきます。下記において見ていきましょう。
夏の野宿 ―蚊がうるさい
自宅で寝ている時でさえたった一匹の蚊に安眠を妨害されることさえあるわけですから、いわんや夏の野宿をや、です。蚊対策について講じ得る手段を列挙していきましょう。
蚊取り線香
蚊取り線香は風流であり、オーソドックスな手段です。コストは安いですが、一晩持たないという致命的な欠陥もあります。荷物にもなってしまうのは難点です。
虫除けスプレー
根本的な対策としては優れていますが、荷物になる、コストがかかるといった難点もあります。
高いところで眠る
公園の遊具の上など、蚊の絶対数が少なそうな場所で寝ることです。
蚊帳
蚊帳は読んで字の如くの蚊対策です。殆どのテントに付いていることが多いです。
寝袋に潜り込む
完全防備です。茶こしで空気穴を作るという高等テクニックもあるそうです(サバイバル登山家・服部文祥さん談)。暑そうなのが難点。
虫よけネット
安価に対策をするならもってこいです。
ビビィサック
一人用シェルターです。テントよりも軽量で携行性に優れ、蚊よけにもなります。
冬の野宿 ―とにかく寒い
冬の野宿の唯一の難点は寒さです。対策を怠ると凍傷になってしまったり、命を落としかねないため、万全の対策をする必要があります。
防寒対策万全の寝袋を使用する
前述の通り、寝袋には商品によって最低使用温度がメーカーによって規定されています。冬に野宿をするなら登山用などの最低使用温度の低く設定されているものを使用するようにしましょう。
貼るホッカイロ
貼るホッカイロを全身にペタペタと貼りまくる。根本的な対策となり得るものですが、コストが掛かりすぎるという難点があります。数を少なく抑えるためには、まずは腰に貼るといいです。
湯たんぽ
ガスコンロを携行している際に限られますが、お湯を入れるだけという大変にエコな防寒対策です。
ブルーシートと新聞紙
寝袋がなかったり、あまりにも寒すぎる際に使える緊急用の手段として、間に新聞紙を差し挟みながらブルーシートにぐるぐるとくるまるという手が『野宿入門』に紹介されています。あまりにもシンプルすぎる手段ですが意外ととても温かいそうです。
参考文献:
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