「失踪するなら都内に行け」という趣旨の記事を書きましたが(参考記事:失踪する行き先なら絶対に都内を選ぶべき5つの理由)、それは定住を画策するなら都内を始めとする都市部が最適であるということです。便利さ、身の隠しやすさ、薄利多売による物価の安さにおいて、都内の右に出る場所はありません。
ところで、全ての失踪人が定住を志向しているとは限りません。「定住」の対義語は「放浪」ですが、「放浪するなら南へ行け」というセオリーがあります。本稿における「南」とは、四国、九州、沖縄のことです。物価の安さで言えば宮崎県、フリーダムさで言えば沖縄県でしょう。
本稿においては放浪するなら南へ行くべき3つの理由を解説していきましょう。
1. 温暖である ―メンタルにもフィジカルにも負担が少ない
「失踪した人が北へ向かっていると危ない」という意見が多く聞かれます。すなわち、自殺企図の可能性が高まるということです。「津軽海峡・冬景色」という歌からは寂しさや荒涼・寂寞感がひしひしと伝わってきますが、見知らぬ北国の閉塞感や寒さは、失意のうちに失踪したネガティブな感情を増幅させてしまい最悪のケースに行き着いてしまうことが多いとされています(参考文献:『失踪「超」入門』、スローガン著、アスペクト)。
それに比べ、当たり前の話ですが南は温暖です。マインド的な部分においても行き詰まりを感じにくい(「どこに行っても寒い」は最高の行き詰まりである)し、何しろ防寒具を多く持たなくて良いので荷物を最小限にすることができます。北国における野宿は死活問題ですが、南国ならオールシーズン可能でしょう。
私はかつて東北の山形県に住んでいたことがありますが、さすがにその土地で放浪するのはかなり無理があるだろうと思うのです。冬は1日で1メートル以上の雪が積もり、朝起きると窓の外は別世界であったなんてことは日常茶飯事です。そんな中を公園で寝ていることは現実的ではありません。
メンタルにおいてもフィジカルにおいても「暖かい」という条件はそれだけで恩恵に値するものです。
2. 南は旅行者にも温かい傾向にある
四国の八十八ヶ所を徒歩で巡るお遍路さんに代表されるように、西日本には野宿をしながら旅行をする人が多いです。そのような人に接する機会が多いためか、地元の住民の方も旅行者に対して温かく、親切にしてくれる傾向にあります。
とは言え、人やその地域の親切さを数値化することは不可能であり、厳密に計ることはできません。ここで言う「西日本は人が温かくて親切」というのは科学的データに基づく事実ではなく、極論、単なるイメージに過ぎません。
ですが、『野宿入門』(かとうちあき著、草思社文庫)において四国や九州の野宿旅のエピソードがふんだんに盛り込まれていることは印象的です。練達の野宿者でさえ「放浪するなら南へ行け」のセオリー通りに実行していることが伺えます。
3. 南国へ向かった失踪者3人のエピソード
1. 南国で海水浴をしていた失踪フリーター
コンビニエンスストアのアルバイトで生計を立てていた男性が失踪、家族は探偵社に捜索を依頼。ATMからの現金引き出し履歴を元に足取りを辿ると、当初は北を目指していたものの、数日後には福岡県での引き出し記録を確認、そのまま追跡を続けるとどうやら沖縄に向かったようでした。
捜索隊が現地に向かうと、そこには沖縄の澄み渡る海でシュノーケリングをする本人の姿を確認したそうです。おいおい失踪してシュノーケリングかよ、と思うのは尚早です。最悪の事態になるどころか、元気に自由を満喫していたのですから。(参考文献:『失踪「超」入門』)
2. 無人島生活をしていた市橋達也
その常軌を逸した生命力によっていろいろな意味で世間とネット界隈を騒がせた市橋達也ですが、その罪は決して許されざるものであるわけですが、2年7ヶ月の逃亡生活を展開したという点は本稿においては興味深いところです。
市橋氏も逃亡初期に一旦は青森県へと向かっていますが、その後南下。大阪での住み込み労働と沖縄県オーハ島での無人島生活のサイクルを繰り返していました。オーハ島には最長で3週間定住し、自給自足生活をしていたようです。
3. 失踪後、沖縄で副社長になった人
仕事が嫌になって、出勤するその足で沖縄へフライト。そのまま賃貸物件を契約・居住。アルバイトをするなどして食いつなぎ、なんやかんやでそのまま沖縄に定住。後に農業法人に就職して現在は同社の副社長をしているという、事実は小説よりも奇なりなエピソードもあります。
参考外部サイト:俺が失踪した話ししていい?|不思議ネット
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