失踪をする際に何を持っていけば良いのかという問題があります。失踪とは今まで当たり前にそばにあったものを手放すことと同義であり、その中から手に持てるだけの僅かなものを厳選して持っていかなければならないのです。
失踪生活において必要不可欠な所持品は人それぞれだとは思いますが、本稿においてはそれを実践的に標準化すべく、『完全失踪マニュアル』(樫村政則、太田出版)を参考文献にして「失踪する際に必要な持ち物」を提示していきたいと思います。
失踪する際に必要な持ち物
2組の下着、服
衣類はとりあえずは2組あれば充分。一方を着ている時にもう一方を洗う。必要になったら安いものを買えばいいので、最初から大量に衣類を携えて失踪生活に突入する必要はありません。
簡単な洗面用具
顔を拭いたりするタオル類。
地図、ガイドブック
地図等は本来の道標としての役割の他に、観光者を装うために役に立ちます。昼間から街中をふらふらしていても地図や観光ガイドブックを片手にしているだけで職務質問をされる可能性はグッと下がる。
※地図、ガイドブックに関して『完全失踪マニュアル』には上記のようなことが書かれていますが、誰もがスマートフォンで情報を取得している現状、わざわざガイドブックを持っているほうが怪しい気もしてしまいます。「地図、ガイドブック」は必ずしも必要不可欠というわけではなさそうです。
ガムテープ
野宿をする場合にダンボールを接着したり、ゴミ袋を繋げて傘や合羽代わりにしたりと何かと便利。野宿ではなくネットカフェに滞在するのであれば不要でしょう。
寝袋
寝袋も野宿をするなら重宝するけれど、そうでないなら不要。
現金
この持ち物リストの中で現金は最重要です。お金があれば服も買えるし、ガムテープも寝袋も買える。ネットカフェにも泊まれる。ラーメンも食べれるし、娯楽も享受できる。万能。だけど有限。
1泊3,000円のネットカフェに1ヶ月間泊まったとしてもそれだけで90,000円という恐るべき支出となってしまうことは覚えておいて損はないでしょう。
ちなみに居場所がバレるのを避けたいならクレジット決済は使用しないのが鉄則です。利用明細によって潜伏範囲がバレてしまいます。同じ理由でATMで現金を引き出すことにも注意が必要です。
身分証明証
保険証や運転免許証を持ち歩いていることで、身分証の提示が必要なサービスを受けられる(ネットカフェの利用、携帯電話の契約、など)他、万が一警察官に職務質問をされた際にスムーズに受け流すことができます。身分証明証を見せるだけです。
ところが身分を証明するものを持っていないとなると煩瑣な質問攻めに遭ったり、自宅や実家に連絡をされたりと面倒なことが起こりかねないというわけです。
また、仮に捜索願が出されていたとしても、本人の意志で失踪・家出をしているのであれば警察は強制的に連れ戻すことはできません。本人の意志が尊重されるからです。
で、本当に必要な持ち物厳選3つ!
私の2ヶ月間の失踪体験を元にすれば、本当に必要な持ち物は下記の3つです。
1. 衣類
3日分をカバンに詰めて持っていました。主にTシャツと下着です。ズボンは嵩張るので毎日同じものを履いていました。で、Tシャツと下着は3日毎にコインランドリーで洗っていました。
失踪開始が秋の頃で、季節とともに寒くなってきたのでカーディガンと上着を買い足しました。カバンも最初に持っていったのが小さめの物だったので、大きめの物に買い替え、最初に持っていたものはゴミ箱に捨てました。
2. 現金
言うまでもなく重要です。貯金がそれなりにあったので当初はあまり不自由しない失踪生活でしたが、明らかに残高が減っていくので終盤は大変な不安に苛まれ、失踪を断念しました。
3. 身分証明証
職務質問をされることは一度もありませんでした。各地方自治体の条例によって身分証明証の提示が義務付けられているネットカフェが増えていますので、持っておくと行動範囲と選択肢が広がり、安心です。
その他
失踪中は基本的に何もやることがないので暇つぶしによく本を読んでいました。とは言え、あまり多くの本を持ち歩くと荷物が増えてしまうので、ブックオフなどで中古の文庫本を買い、読み終わったら即座に売るようにしていました。
携帯電話・スマートフォンは必要か?
失踪における持ち物で悩ましいもののうちの一つにスマホがあります。スマホはもはや生活に必要不可欠なツールであり、特に失踪という右も左もわからない状況においてもあらゆる情報を集めるために非常に役に立ちます。
しかし、便利なスマホが仇になる場合もあります。それは失踪を知った人たちから頻繁なる連絡がガンガン来るということです。一人になるために画策した失踪なのにこれでは元も子もありませんし、そうやって自分を心配してくれている人がいることを感じてしまうと失踪の意志も揺らいでしまいます。
本稿においては、失踪生活においては携帯電話・スマートフォンは必要ないとの結論を提示しておきます。それまで使っていたスマホは処分するか、堅牢なセキュリティをかけて家の奥底に仕舞っておきましょう(家に置いてきたスマホのアドレス帳から友人などに電話をかけられまくるのは非常に厄介です)。
但し、どうしても必要な場合は、失踪先で新たに契約して入手すれば良いでしょう。
コメント